深海の底で息を

生きること死ぬこと

塩原温泉

 

那須塩原温泉に行ってきた。

友人と。3人と付き添いの人で。

山緑深く、雨が降っていたこともあり

瑞々しい森の香りを沢山吸って

のんびり川沿いの露天風呂に浸かって、

生き返って帰ってきた。

 

やけに眠たくなる旅だった。

お風呂上がりにウツラウツラ、

ご飯を食べ終わったらウツラウツラ、

車でウツラウツラ…

 

久々にホッとしたのかもしれない。

女友達は、みんな味方でいてくれる気がして

心強い。

 

彼氏と別れたと伝えたら、

えっ!と大きな声で驚いていたけれど、

なんとなく話を聞いてくれて、

気持ちに寄り添ってくれた。

余計に詮索もしないし、

優しい気持ちが伝わってくるから、

聞いてもらっただけで、

少し安らいだ気がした。

 

18歳から彼氏がいない時期がなかったので

女友達よりも、彼氏といる方が多かった。

だけど、弱ってる時に

ふと側にいてくれて、

味方でいてくれて、

一緒に楽しい時間を過ごしてくれる、

そんな女友達に救われることが

今回本当に多かった。

 

みんなお互い色々あるのだけど、

必死に頑張ってる。

悩みながら、迷いながら、

毎日闘っているのだ。

戦友たちよ。

 

なので、共に過ごす楽しいひとときが

癒しの時間になる。

女の子もいいねえ。

 

そういえば、旅行の前の日に

採れたての葡萄を持って、

彼のご両親に挨拶をしに行った。

 

もちろん、お別れの挨拶である。

 

玄関ですますつもりが、

私が泣きそうなのを察したのか、

心配して、快く家にあがらせてくれた。

家にはご両親だけがいた。

 

ご両親には、ふたりの同棲の準備の時

本当にいろいろと、お世話になった。

お金もたくさん使わせてしまった。

 

なのに、こんなことになってしまって、

しかも、私が結局半年

引っ越ししなかったこと、

どんな風にとられているのだろう、

無礼だと思われていないか、

恩知らずだと思われていないか、

 

チャイムを押すまで本当に不安で不安で、

土砂降りの雨の中、葡萄をぶら下げて

心細い思いだった。

ひどく孤独だった。

今私がひとりで頑張らなくてはいけない時だ。

 

私の両親も、心配そうに

家から送り出してくれたので、

何かあってもきっと大丈夫。

見守ってくれている。

 

そうやって自分を奮い立たせた。

 

しかし、チャイムを押した後に

待っていたのは、温かいご両親の心だった。

人っていうのは、

自分で思っているよりも

ずっと優しかったり、慈悲深いものなのだと

そう思った。

 

気が付いたら2時間半も、

いろんな話をしてくれた。

聞いてくれた。

自分の息子がどういう性格なのか、

何が足りないのか、

両親に対してはどうなのか、

本当にいろんなお話をしてくれた。

 

私の弱点も、優しくたしなめてくれて、

やはり私のような若輩者は

ご両親から見ればまだまだ

未熟者なんだなあと思った。

いろいろ見透かされていたし、

多くを話さなくてもわかってくれた。

 

最後は「社交辞令じゃなく、

いつでもまた来てください。

話くらいは聞けるから。

これも縁だから」と笑って言ってくれた。

 

自分の息子と

縁が切れてしまった私を、

ひとりの人間として

温かく迎えてくれている気がして、

本当にありがたかった。

 

あんなに不安で向かったのに、

家に着いた頃には

ホッとして、

やっぱり迷ったけれど、

きちんと挨拶をしに行って

本当によかったと思った。

 

終わってみれば、

気持ちもだいぶ清々しかった。

彼に対する痛みも、少し落ち着いていた。

 

こんなに優しく温かいふたりの息子なんだな。

あとはもう、幸せになって欲しいな。

そんな風に思った。

 

結局、やはり親というものは偉大で、

大切にしなければならないものだと思った。

本人には会えなくても、

この目の前のふたりの子供が

あの人なんだなあって思うと、

結局それはこの人たちそのものでもあり。

 

だから、親に会えて

いろいろ話せたら

なんだかほとんどすっきりした気がした。

 

このまま、少しずつでも

いろんなモヤモヤを解消させて

いつか霧が晴れたすっきりした気持ちで

新しい道を歩きたい。

 

すくすく

 

本当に少しずつだけど

心が元気になってきているかもしれない。

あの地獄のような気分からは

抜け出た気がする。

 

さすがにもう一ヶ月半が過ぎた。

もうすぐ二ヶ月。

植物の芽が少しずつ萌え出るように、

心も癒され始めてるのかもしれない。

 

何も無理しなかったし

家族に白い目で見られるほど

堕落した生活をした。

というより、それしかできなかった。

本当に心に元気がなかったし、

何の気力もわかなかった。

 

物件を見たり、家具を見ているうちに

新しい生活へのワクワクも

やっと、少しずつ出てきたのかもしれない。

今は、ほんの小石ほどの光だけど。

 

そして彼がいなくなったことも、

受け容れることができ始めたのかも。

それは、本当に少しずつだけど…

 

iPhoneの新しい機能で

「ピープル」という写真自動分別機能が加わった。

顔認証で勝手に人物分けしてくれる。

これが結構、辛かった。

元彼との楽しかった思い出の写真を、

彼の人物紹介として、

それこそまとめて、ズラリと並べてきた。

温泉旅行、ディズニー、スノボ…

辛いほど。

そこには幸せそうなふたりの写真が

たーくさんあった。

 

グループ分けでは、

私の顔アイコンと、彼の顔アイコン

ふたつが並んでいた。

「2人 一緒に」という文字と共に、

2ショットの写真だけがたくさん並べられた。

 

iPhoneも、私たちが恋人だったよって

こんなにも、ふたりで一緒にいたんだよって、

まるで証明してきてるみたい。

 

そこには私たちの3年半が、あふれてた。

まるで、最近の私の心の中をのぞいたような。

たくさんの思い出たちが、

次々とスライドショーになって流れていく。

 

こんなこともあったなあ、

あんなこともあったなあ。

一緒に過ごした沢山の日々を考えると

なぜ今一緒にいないのか、

よくわからなくなる。

 

これが、結婚式で流すスライドだったら

すごい素敵なのになあ。

 

思えば、旅先でお気に入りの2ショットが

撮れる度に、

「これ結婚式で使えるなあ」

なんていつも想像してた。

こんなにあっけなく終わってしまうことも知らずに。

 

本当に、恋の終わりなんて

あっけないものだ。

どんなに3年半、愛を語り合っても。

喧嘩しても。許しても。

いつも一緒にいても。

 

新しい恋が始まれば

途端にそれは、古いものになって

色褪せてしまうのだ。

 

今は、恋人を失ったショックよりも、

むしろその虚しさの方が

心を苦しめる。

 

 

 

不眠

 

眠たいのに眠れない。

 

もうすぐ朝の7時。

眠れないでベッドにいると

嫌なことで頭がいっぱいになってしまい

どんどん冴えてしまう。

 

別れた彼のことが

フラッシュバックのように蘇って

胸を締めつける。

こめかみが痛む。

 

失恋から立ち直るのに

人はどれくらいかかるのか。

1日も早く忘れてすっきりしたい。

苦しんだって何ひとついいことない。

 

物件を見たり、家具を調べたり

なんとか新しい方向へ目を向ける。

だけど現実は何も変わっていない。

気力がない。

最近は朝ごはんすら食べるのが億劫だ。

何をするにもやる気が全く起きない。

家事も大変苦痛なのだが、

仕方なくこなしている。

しかし、日に日にその苦痛が大きくなっている。

心に負担がかかっているのがわかる。

 

人とも関わりたくない。

メールの返信もとても億劫で放置している。

今、私に何を言われても答えられない。

男性からの食事の誘いが3つほどあるが

どれもストレスにしかならない。

誰とも会いたい気分じゃない。

 

このままでは心が壊れてしまいそうだ。

それとも心は案外強いものだろうか?

 

どこに救いがあるのかわからない。

半月ほど前には、過呼吸で倒れた。

急に、発作のように全てが辛くなって

嗚咽して泣いていたら、

過呼吸になってしまって

そのままどんどん身体が硬直して

手先も全く動かなくなってしまって

息苦しくて呼吸もできなくなって、

ついには父をなんとか呼んだのだが

その場で倒れこんで動けなくなった。

 

救急車を呼んでもらおうかと思ったが

到着するまでに窒息してしまうのではと

恐怖心でいっぱいになった。

 

母親も駆けつけて、

水を持ってきてくれたりして、

少しだけ身体が動くようになってから、

私は、そのまま悲しさに、咽び泣いた。

情けなくて、あまりにも惨めだった。

 

几帳面で潔癖性な自分が

ある頃から、なぜかどうしても

自分の部屋を片付けられなくなってしまい、

物が溢れかえって手がつけられなくなっている。

 

そのこと自体にも

パニックを起こしたし、

片付けられなかったことが

結果的に引越しを引き延ばしてしまい、

彼との別れに繋がってしまった。

 

毎日、目が覚めた時は最悪の気分だ。

また同じ地獄のような1日が始まる。

この世は素晴らしいって、

素敵なものがたくさんあるって、

よくわかっているのに、

今の私はそれらからとても遠くにいる。

 

 

台風がくる

 

結局、どうにかして

乗りこえなきゃいけないのはわかってる。

この暗闇を突破して。

明るい場所に出なければ。

 

今は、町に出るだけで辛い。

どこにでも、彼との想い出が

ちりばめられているから、

とても悲しくなる。

 

一緒に並んで歩いて

彼のとなりから見た景色が

ふいにフラッシュバックして

苦しくて泣きたくなる。

 

どうしてだろう

どこかで彼は今も幸せに

笑っているというのだから、

それだけでいいじゃないか。

悲しいことはない。

私の横にいないことをのぞいては。

 

彼の幸せを願う。

 

自分を一番大切にすることを

長いこと忘れてしまったので、

なんだかボロボロだし

自分が誰だったのかも

たまにわからなくなる。

 

親孝行。

浮かんでは、心が苦しい。

親が元気なうちに安心させられて

あげられるのだろうか。

方法がよくわからない。

 

 

 

心の穴

 

心にぽっかりと穴があいてしまった。

3年半もずっと側にいた人が、

ある日突然去ってしまった。

 

向こうには新しい人がいるから、

私だけひとり置いてけぼりだ。

心の整理がついていかない。

 

大切にできなかったのは、私の方だ。

 

いつも、どこに行くにも一緒だったのに。

温泉旅行、海、プール、スノボ。夏の花火。

スーパーの買い物。

 

梅の花を見に行った。

一緒に自転車二人乗りした。

浅草から、遊覧船に乗った。

芦ノ湖でボート漕いだ。

北海道で喧嘩した。

仲直りして、一緒に海鮮巡りした。

鎌倉に初詣に行った。

栃木の渓谷を見に行った。

宇都宮でギョーザ食べた。

スナックでお酒いっぱい飲んだ。

 

クリスマスは、毎年ディズニーに行った。

サプライズでプレゼントくれた。

嬉しくて、照れ笑いした。

 

公園でキャッチボールした。

シャボン玉ふいた。

ラーメン食べた。

お鍋食べた。焼肉食べた。

カラオケ、飽きるくらい行った。

 

箱根のカフェで、絵のしりとりした。笑った。

いつもいつも、一緒だったのに。

 

突然、違う人の所に行ってしまった。

突然ではなかったのかもしれない。

 

忙しい私は日々を乗り切るのに必死で、

寂しい相手に、気付けなかった。

ちっとも大切に、できてなかった。

とても悲しい。

 

心を許してしまってたのだなあと思う。

 

死んでしまいたい、と思うことは

20代に比べてほとんどなくなった。

 

けれど、要するに逃げ場すら、

どこにもなくなってしまった。

今の方が、きつい。 

 

夜中

 

考えても仕様のないことを

考えて考えて

ふいにぎゅうと心苦しくなって、

勝手に涙がながれた。

 

毎日くたくたになるまで働き続けたら、

よく眠れるようにはなったけれど

疲れが抜けなくて、

終には身体が悲鳴をあげた。

 

どんなに働いていても

少しばかりのお金が残っては消えてゆくだけ。

とてもじゃないけど、毎月足りない。

考え方まですっかりケチになってしまった。

人に対しても、ケチになる。

 

最近、電車でなぜか隣に座られる事が多い。

女の人は、女の人の隣に座りたがる。

「隣、いいですか」と聞かれる。

露骨に嫌な顔をしながら、

無愛想に肯首する。

他の席も空いているのに…と苦々しく思う。

 

瞬間、自分の心がカサカサなことに気付く。

気付いて、泣きたくなる。

人に、優しくできない。

疲れているのだ。

心に余裕がない。

いつからこうなった?

 

貧しさと疲れに蝕まれているのだ。

きっと、みんなそうなんだなと解った。

優しくしたいのに、できないくらい

くたくたに疲れきっている。

お金もない。残るのは不安ばかり。

だからみんながみんなに、優しくできない。

 

 

 

眠れない

眠れないと嫌なことや
悲しいことを
次々沢山考えてしまうので、

身体がくたくたになる
肉体労働の仕事を始めた。
よく眠れる。
何も考えずに泥のように眠れる。
頭が考え出す前に、
ヘトヘトの身体が眠りたがる。
これでよい。
肉体に精神を支配させるのだ。

身体が、一番偉いのだ。
身体が一番尊いのだ。
朽ちてゆくのもまず肉体なのだから。
頭で悩んで眠れなくなって、
身体を休ませないなんて
身体が怒るに決まっているのだ。

身体のことをまず、考えよう。
精神が蝕まれている。

毎日、くたくたに
身体が疲れている時だけが
なんにも考えずにいられる。